東京高等裁判所 昭和27年(う)1676号 判決
原判決書によれば、原判決は、その理由において、判示第一の事実として、被告人三名が法定の除外事由なく阿久津正司と共謀して昭和二十五年三月中旬頃、九回にわたり、栃木県芳賀郡清原村大字板戸小林忠蔵方外八箇所において、同人外八名より玄小麦(一俵六十瓩入)合計十六俵を買い受けた旨の事実を、判示第二の事実として、被告人秋三郎、同武が法定の除外事由なく、被告人吾市又は渡辺良知を介して、同年同月十七日頃から、同年同月二十五日頃までの間に、十三回にわたり、同県同郡同村同大字増渕八右衛門方外十二箇所において、同人外十二名から未検査小麦(一俵六十瓩入)合計六十俵を買い受けた旨の事実を、判示第三の事実として、被告人吾市が、被告人秋三郎、同武の右判示第二の買受をするにあたり、その仲介をして集荷を容易ならしめ以て各買受の幇助をした旨の事実を、それぞれ認定判示した上、右の認定事実に対し、食糧管理法第九条、第三十一条、同法施行令第六条等を適用処断していることが認められるのであるから、原判決においては、右の第一、第二の各所為及び第三の幇助行為が、いずれも、食糧管理法第九条第一項の規定による命令たる同法施行令第六条の規定に違反したものと認定し、同法第三十一条の罰則規定によつてこれを処断したものであることが明らかである。而して、右の行為当時における食糧管理法施行令第六条には、「政府以外の者は、米麦等(甘しよ及び馬鈴しよを除く。以下本条中同じ。)の生産者から、その生産した米麦等を買い受けてはならない。但し農林大臣の指定する場合は、この限りでない。)と規定しているのであるから「米麦等の生産者からその生産した米麦等を買い受ける」ことは、同条違反罪の特別構成要件中重要な部分であるというべく、従つて、判決に同条違反罪の罪となるべき事実を判示するには、買受人が政府以外の者であること、農林大臣の指定する場合(法定の除外事由)でないこと等の要件と一しよに、「売渡人が米麦等の生産者であつて、その者の生産した米麦等を買い受けたものである」ことが認め得られる程度にその事実を示すことを要するものといわなければならない。しかるに、原判決書によれば、原判決は、この点につき単に、「被告人らが何時、何所で、何某より玄小麦又は未検査小麦何俵を代金何円で買い受けたものである。」旨を判示しているだけであつて、その玄小麦又は未検査小麦の売渡人が米麦等の生産者であること、及び、その買い受けた小麦がその売渡人の生産にかかるものであることについては、全然これを判示していないことが明らかであるから、原判決には、この点について判決に理由を附さないか、又は、理由にくいちがいがあるものというべく、従つて、原判決はこの点においても亦破棄を免れないものといわなければならない。